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WB工法 普及までの道のりと
これからの家づくり

WB工法の開発元

(株)ウッドビルド代表取締役

寺島 聡剛

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富山のミスターWB

(株)KUMUKU代表取締役

茶木 均

WB工法を開発した会社(株)ウッドビルトの寺島社長が、弊社代表茶木がいる富山市八尾町のKUMUKU本社まで長野から会いに来てくれました。

長い付き合いのある二人。WB工法を富山に広めるために走り回っていたころの話しから、これからのあるべき家づくりまで話題は膨らみます。

プロフィール

寺島 聡剛

(株) ウッドビルド 代表取締役

大学で建築を学び、3年の大工修行を経て、(株)ウッドビルドに入社。10年間WB工法の経験を積み、代表取締役に就任。WB HOUSEの拡販に心血を注ぐ。

茶木 均

(株) KUMUKU 代表取締役

木材会社在職中にWB工法を知り、富山県内での普及に努め、WB工法に最も詳しい男として「富山のミスターWB」と呼ばれる。WB工法の家が何よりも好き。

腹にストーンと落ちたんです

寺島

私が茶木さんと出会ったのは、ちょうどWB体験施設WB village(当時:ワンダーベース)ができるかどうかという頃でしたか?

茶木

そうですね。20年ほど前ですね。当時勤めていた、富山県代理店の田島木材さんと御社の契約時に同行しました。

寺島

自宅近くの小さな事務所で、まだペラ一枚のパンフレットしかなく、必死に説明をさせて頂いたのが懐かしいです。現在、事務所にしている長野市七二会に小さな実験棟があって、そこも見学して頂きましたね。

茶木

そうでした。その後、ぼくが大病をしまして...。療養中の暇な時間に、頂いていた今朝成会長が執筆された何冊もの本を端から読み始めました。読むほどに、その内容がストーンと私の腹に落ちたんです!

寺島

なぜですか?

茶木

田島木材さんに入社したばかりの頃、配達を担当していまして、リフォーム現場に行くことも多くありました。意外と新しい家でも、壁の中がひどい状態になっていることをたびたび見ることもあって、よ~く知っていました。何でこんな事になってしまうんだろうと不思議に思っていました。

寺島

その経験が強烈だったんですね。

後ろに見えるのはWB工法の説明用模型
茶木

WB工法の本を読めば読むほど、通気性が良くなければダメだと強く思いました。病気から復帰した後、重たい建材を担ぐ仕事に不安もあったので、WB工法を広めることをやってみようと思ってから今に至ります。

寺島

それからですよね。地域の工務店さんを連れて、長野に毎週のように来ていただきました。

茶木

毎週のように会長の話を聞いていたものですから、一語一句間違えずに説明できるようになりました。説明を上手になるには、まずは真似からですね。もう、聞くことすべてが納得の連続で、WB工法を広めなければという使命感にとてもかられました。

寺島

そんな茶木さんと、色々な所を歩きましたね。当時は知名度もありませんでしたから、なかなか相手にしてもらえなくて苦労しましたね。

茶木

当時は、ソーラーサーキットやエアサイクル・トステムのスーパーウォールなどの工法ブームでしたから、富山の工務店さんが飽き飽きした時にWB工法と言ってもなかなか難しかったですね。

寺島

「大手の立派なカタログがある工法に対して、ペラ一枚のカタログしかない長野の田舎の工法なんて」と、よく言われてね(笑)。

茶木

「省エネ・健康・家が長持ちする、これが3つ揃っていないと良い家とは言えない。どうやってお客さんに説明するんですか?」と工務店さんに聞くと、「省エネは高断熱・健康は換気・家は断熱材をギチッと詰めていれば結露なんてしない。おまえグラスウールの最新施工の仕方を知らないのか?」なんて言われた事もありました。

それでも食い下がって、「高気密にすれば省エネになる。だけど、省エネになったら室内の空気がよどんでしまう。穴を開けて換気扇で空気を入れ替える。これってほんとうに省エネなんですか?」と言う感じです。

寺島

熱意が溢れていますね!

茶木

それで、少し興味を持った工務店さんをすぐに長野へ連れて行き、実際にWB工法を感じて頂きました。その時の工務店さんの「目からうろこが落ちる」のを目の当たりにするのが、たまりませんでした。

やればやるほど自分の良い家を作りたいという想いが波及していくのが、私にとって充実した時間で楽しくてしょうがなかったです!

寺島

工務店さんの腹にもストーンと落ちた瞬間ですね。

WB工法はあくまでも
一つの手段です

寺島

初めは、工務店さんのようなプロを相手にWB工法の営業をされた訳ですが、今度は一般のユーザーさんが相手ですよね?プロを説得出来たら、ユーザーさんを説得するのは難しくないんじゃないですか?

茶木

それがそうじゃないんです。実は、私もそこでつまずきまして…。住宅のプロを相手に話をしている時はWB工法の話だけすれば良かったんです。

だから、WB工法さえ知っていれば、住宅の提案もスムーズにいくんじゃないかと思っていました。

でも違っていましたね。WB工法は、あくまでも一つの手段なんですよね。

寺島

なるほど。

茶木

まずは、お客様に良い会社だなと思ってもらえる基準がしっかりなければダメです。デザインは当然・使う素材・営業の対応・会社のブランド・コストなどなど。この「トータルな家づくり」の基準を満たしたうえで初めてWB工法の話をすると、より付加価値がついてお客様に納得してもらえることができます。

基準を満たしていないのに、いくらWB工法の話をしてもなかなかお客様には支持してもらえません。KUMUKUを設立する前に12年ほど地元の工務店で経験を積みましたが、最初の1年半ぐらいは契約に繋げることができなくて大変苦労しました。

ですから、代理店時代に私が勧めてWB工法の会員さんになっていただいた工務店さんの中で、当時の私のように勘違いをされていらっしゃる会社は、苦戦されたり続けられなかったりしていると思います。

逆に基準がしっかりされている工務店さんは、WB工法を上手に提案しながら今も頑張っておられます。

(株)ウッドビルド 寺島社長
寺島

そうなんですよね。前回のWB Times 3月号にも書かせていただきました七味の話。覚えていらっしゃいますか?

基準を満たしたKUMUKUさんの建てる家がお蕎麦だとしたら、WB工法はそこにちょこっと効いている七味(薬味)のようなものです。でも、あるのとないのとでは全然違うんですよ。

茶木

お客様は、KUMUKUの家を楽しみに来られます。そこにWB工法が良い隠し味としてあります。でも実はそれがとても大事で、それをおろそかにすると後悔する可能性が大きいという事ですね。

築15年WB工法の家。
壁の中の様子に感無量!

寺島

これまでWB工法の家を建てられたユーザーさんで、印象に残っていることはありますか?

茶木

15年くらい前でしょうか。初めてWBの家を施工する会員さんの現場指導をさせて頂きました。つい2年ほど前、そのお宅をリフォームするという事で解体の様子を見に伺いました。WB工法とは言え、さすがに15年経っていると壁の中の様子に正直不安はありました。

寺島

で…どうだったのですか?

茶木

それが凄かったんです!断熱材も材木も、まるで新築時から時が止まっていたかのように新品同様の状態でした。本当にびっくりしたと同時に、今までやってきたことが裏付けられたと感無量でした。

15年経過した壁の内部
内山

私も立ち会いましたが、ユーザーさんもとても喜んでいらっしゃいましたよね!

茶木

今年元日のような地震がまたいつ来るかわかりません。これなら、息子さんの代まで十分に安心して住んで頂くことができます。新築の状態を長く保ち続けられれば、最初の性能をいつまでも担保できるのですから。

寺島

そうですね。今は耐震性能が高い家が当たり前になりました。ただ、その高い性能をどれだけの年数保持できるかが鍵になります。耐震性能の良い家を建てたから安心というわけではないという事です。

通気構造は特に湿度の高い富山では必須です。

KUMUKUの
「トータルな家づくり」の基準

寺島

代理店・工務店などを経験され、新たに独立されたのにはどんな想いが込められていますか?

茶木

今年54歳になります。WB工法を一生懸命やってきたという自負もあります。

寺島

富山のミスターWBという称号があるぐらいです(笑)。

富山のミスターWB 茶木均
茶木

(笑)。だから、もう少しWB工法を掘り下げて、自分が思う「正しい家づくり」により近づけていきたいという想いからです。

寺島

「KUMUKU」のネーミングにはどんな由来がありますか?

茶木

無垢材で家を造るという事は絶対やりたかったんです。それと、お客様の話はたっぷり聞いたうえで提案したいですね。なので、「無垢で組む:MUKUでKUMU」「意図を汲む:意図をKUMU」を合わせた名前になりました。

寺島

韻を踏んだような響きとアルファベットの並びが面白くて洒落ていますね。

茶木

いつもユーザーさんに言うにのは、住み心地が大事だという事です。

性能の良い材料を使えば住み心地の良い家になるかと言えばそうではありません。「住み心地」とは何かと言うと、窓からの風がキチッと流れるか・軒の長さが必要な所はしっかりあって夏の日差しを遮れるかなどの設計力。

また、無垢にこだわりたいと言って無垢を使えば良いという訳でもなく、適材適所があります。楢とか欅は、傷がつきにくいし木目が美しいので床材によく使われますが、硬いので冬は寒いし夏は足の裏がペタペタします。

だから私は、調湿性の良い信州唐松を使います。構造材だってそうですよね。土台は硬い木を使います。全体重を受け止めるから。柱はまっすぐな木を使います。横にしたら折れるけれど、上からの力には強いから。梁は弾力性のある松を使います。

寺島

私も大工でしたから、よくわかります。事務所にされているこの建物も静かで雰囲気の良い空間ですね。

茶木

この建物は築80年ぐらいの古民家です。この静かな落ち着いた空間で、ユーザーさんとじっくり打ち合わせをしたいなと思っています。

6月からは土日だけ、一部テナントで雑貨屋さんがオープンするので少し賑やかになりますよ。作家さんの手作り雑貨や古道具などを扱いたいという事で、想いが共有できてお互いメリットがあると良いなと思っています。

開店に向けて準備中の雑貨屋さん
寺島

楽しみですね!

茶木

来年2025年の春には、富山市内のファボーレという大きなショッピングモールの近くにモデルハウスをオープンする予定ですが、少し遅れそうです。

寺島

それでも、もうすでに契約が決まっているんですよね?

茶木

有難いことです。ですが、やっぱりWB工法の良さを伝えるにはモデルハウスで空気を体感してもらうのが一番なので、できるだけ早く完成させたいと思っています。

寺島

茶木さんの30年という建築に携わってきたキャリアが、KUMUKUさんの「トータルな家づくり」の基準を作り出し、この落ち着いた雰囲気の事務所と街中にできるモデルハウスで、今まさに走り出そうとしているところなんですね。

本日は貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

2024年5月 KUMUKU事務所にて